このコーナーでは、ぼくが知り合った素敵な人たちを紹介しています。共通項は、都会を離れて田園での暮らしを選んだことです。

今回は、皆んなから「ゆもっち」の愛称で呼ばれる湯本高士さんです。甲府で行われていた「甲州寺小屋」という勉強会で知り合ったのがきっかけで、ぼくは湯本さんから農を学ぶことになりました。

1年間を通して行われる素晴らしい講座なので、まずそれを紹介したいと思います。「自給菜園講座」と名付けられた学びの場は、無農薬で家庭菜園を始めてみたいけど何処で教わったらいいのかな?そんなところを探している方にお勧めできる講座です。

3月から12月までの全10回で、道具の説明、種のまき方や苗の植え方、畑の耕し方などをとても分かりやすく説明してくれます。湯本さんの教え方でぼくが素晴らしいと思うところは、様々な農法を知っていてその違いを説明しながら、ご自身がいま行っている栽培方法を選んだ理由も語り、それでいて自分のやり方を受講者に押し付けないニュートラルなスタンスです。ぼくには、しっくりくる教え方でした。

受講者はそれぞれ自分の区画(約9坪)の畑を使って作りたい野菜を育てながら学びます。お天氣にめぐまれれば沢山の野菜を収穫して持ち帰ることができるはずです。詳しくは、講座のリンクを貼りますのでこちらからご覧ください。https://www.megumino0831.com/blank-1

ぼくは、この菜園講座で学んだ後もゆもっちの声がけで始まった「シェアたんぼ」という試みで、めぐみのに集まる人々とお米作りを学び楽しんでいます。

湯本さんは元々は東京で育った方ですが、中学生のころには都会暮らしの脆弱性に氣づき、環境問題や子供の貧困問題、青年海外協力隊に関心があったということですから、問題意識をしっかり持った早熟な少年であったようです。そんな指向から進学したのは東京農業大学の国際農業開発学科で、そこで2年後輩の奥さんと知り合ったそうです。仲良く頑張っているご夫婦の馴れ初めを知って、おおらかな佇まいの中に同士とも言える凜とした絆を感じる理由がわかった氣がします。

湯本さんは、初めから農家になるつもりはなかったと語ります。若いころは、大きな影響力を背景にして農や日本を変えてゆきたいと考えた時期があり農業部門のある大企業に就職したのです。その場での過酷な労働環境に疲れを感じ始めたころ、生活者と生産者の結びつきの中に解決の道筋があると考え、アグリツーリズムを手がけるために旅行業に転職したそうです。

転機を迎えたのは 2009 年・30歳の時、ちょうど奥さんが第1子を身ごもったころで、サラリーマン生活と都会暮らしをこのまま続けられるのか?ご夫婦にとって大きな岐路が訪れました。お二人が決めたのは「農への復帰」でした。山梨県山梨市の週末農業スクールに通うことをきっかけにしようと考えたのでした。そして、そのスクールのメンバーと一緒に旅行した北杜市で、心が揺さぶられたのは「星空の美しさ」でした。こんなところで子育てをしたい、収入よりも大事なものに湯本さん夫婦が氣づいた瞬間です。

その後、30年近く耕作放棄されてきた畑7反を一からご夫婦で開拓し「めぐみの」の畑を作りあげて今に至ります。今は、お子さん達がニワトリを追いかけて走りまわるユートピアのような空間ですが、この畑ができるまでにきっと途方もない苦労があったのでしょう。https://www.megumino0831.comnn

奥さんのあっこさんに、ぼくは大地の母のような強さを感じます。長女のちえちゃんは東京のマンションで自宅出産、次女のかえちゃんは北杜市の助産院、三女のりえちゃんは自宅で自力出産、これを知って驚かない方はいないのではないでしょうか。三女のとき、湯本さんは内心氣が氣ではなかったそうです。奥さんについて出てきた言葉は「すごい人。尊敬しています。」でした。

いま、湯本さんが目指すのは、「暮らし全体を手作りするような農園を作ること」です。この場所で、ご縁ができた人の「半農半X」をサポートしたい。農的な視点を持った人が一人でも増えることで、地球を良くしてゆきたい。そのように考えているそうです。

湯本さんは、普段「ゆもっち」と親しみを込めて呼ばれる笑顔が素敵な人物です。今年、社団法人「八ヶ岳ソーシャルデザイン研究所」を立ち上げて、さらに大きな夢へとスタートしたところです。https://www.facebook.com/yatsugatake.sdi/

『関わるみんなの 得意 才能 好き を持ち寄って、みんなの"農のある暮らし"やそれぞれの"夢"を応援しあえるような農園』を実現したいというゆもっちの夢の答えが、農業を超えた新しい活動の場なのです。ゆもっちと会ってみたいと感じられた方は、ぜひどこかで繋がってみてください。

現状の日本の状況を考えたとき、湯本さん夫婦のように田園に向かう人々が増えるのが必然であろうと、ぼくは考えています。そうした想いがあっても、なかなか一歩が踏み出せない人が多いのではないでしょうか。そんな方々のヒントになる発信をしたいと考え、ぼくはブログを書きイベントを開催しています。読んでいただいたあなたの一助になれば幸いです。