夕方にイベントが終わり、鳳来寺門前にある硯職人の友人宅に向かいました。鳳来寺は、古い歴史があり徳川家に所縁があったことで江戸時代は特に賑わっていたところです。日光・久能山と並ぶ三大東照宮であったのですが、明治維新以後は幕府からの庇護がなくなったことで賑わいが遠ざかってしまいました。
しかし、今回訪れて友だちの名倉くんの家に泊めてもらい様々な話を聴き、自分で散歩して観たところ、この地はもっと注目され人々が訪れる場所であっていいと思えました。この後編では、そのあたりを紹介いたします。
鳳来寺山は、1500万年前の火山の名残で富士山よりも高い山であったそうです。それが削り取られ固い岩が残ったのが山容であり、硯の石が産出されるのもそうした地形が露出している場所があるからです。友は、その場所で自ら原石を掘り出し、工房へ運び、硯として完成するまでの全てを行っています。
1300年ほど前の逸話では、利修仙人が鳳凰に乗って都へ行き時の天皇・文武天皇の病を治した礼として寺が建てられ鳳来寺と名付けされたと伝えられています。この写真は、この話を像にしたもので山門近くにあります。どこかで観たような氣がしませんか。この像は、奈良のせんと君の作者が作ったものなのです。
他にも、山門に至る門前町の各所にたくさんの石碑や彫像があり十二支像もたどれます。それらを観て歩くのは一人でも連れがあっても楽しめると思います。東京芸大彫刻科出身の名倉くんが、その伝で先輩後輩に依頼したことにより彫像の多くは設置されています。
そして、散策の合間にぜひ立ち寄っていただきたいのが「鳳鳴堂硯舗」です。五代名倉鳳山氏が、日々石と向き合い伝統を踏まえつつも独自の感性を加えた「心の器」としての硯を作っています。代表作は日本独自の硯に昇華させたとして、国立博物館に日本の硯としては初めて購入保管されたました。国立博物館が保管する他3点は中国のものということです。実直である友が、少し嬉しそうに語っていました。
書をたしなむ方は、ぜひご自分の使っている墨を持参してお店を訪問してください。その墨に合った硯をすり試し鳳山氏と相談しながら、その方に一番合った硯を求めることができます。効率とは無縁の愚直ともいえる商いですが、ぼくには素敵な生き様と思えます。写真は、奥さんと。
硯の改修やすり心地の調整なども行ってくれるとのことなので、ぼくも亡き母が愛用していた硯を友に調整してもらい使ってみようかと思っています。
鳳鳴堂硯舗さんのリンクはこちらです。https://www.suzuri-houmeido.com
最後にもうひとつ面白い話題を。宮崎駿監督の「もののけ姫」に使われている効果音の中で「静かな森の音」は鳳来寺山で録音されたということです。あなたは、鳳来町を訪れてみたくなりましたか。
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