お墓について何かしら悩んでいたり迷っている人は、かなりいるようです。田舎にある先祖代々の墓を誰が守って継いでいくのか、新たにお墓を買いたいが費用がかかりすぎる、姑と同じお墓に入りたくない、そもそもお墓など必要ないと考えている、など様々なことがあると思います。

ぼくも、お墓についていろいろ考えていたことを結着させようとして、試行錯誤した経験があります。ぼくと妻は、50代になったころから「自分たちのお墓は要らないね」という考えで一致していました。わたし達には娘が一人いるだけなので、いずれお墓を継ぐものがいなくなり無縁仏になることが分かっています。お墓が残っていれば、娘がそのうち重荷に感ずるようになると思っていたのです。

西尾家には父が横浜に設けたお墓がありましたが、ぼくも横浜を離れて30年以上になっていた為、墓参も滞りがちでした。ぼくの当初の考えは、このお墓を整理して入っている父と祖父のお骨を樹木葬の墓所に移し、自分たちもいずれ樹木葬にしてもらう、そんな感じでした。

長男であるぼくが通常はお墓を継ぐのでしょうが、弟が継いでもかまわないと考えていたので彼に相談しました。こうしたことは親族の同意が大事であろうと、ぼくは思っていたので相談したのですが、そこで躓きました。弟は、自分たちの墓は義理の母と入るように用意しているので、父の設けたお墓を継ぐ氣はないが、そのお墓には自分なりの想いがあるので無くなるのも同意できないと言うのです。その時、少し身勝手だなとは思ったのですが、お墓に対する彼との価値観の違いを知り、このままでは歩み寄りは難しいと感じたのでした。

一度持ち帰り他の方法を探ることにしたのですが、程なくして「南禅寺に永大供養の個室墓所」という情報が入ってきました。「これだ」という直感があり説明を聞きに行ったところ、マンション型の区画を所有し登録した納骨予定者の最後の人が入った後39年間をそのまま専有使用して、その後は同じ墓所の合葬区画に移し永代供養される仕組みということでした。

南禅寺という多くの日本人が好感を持つ場所にあり、将来は娘の負担にもならない、京都は父が青春時代を過ごした地でもあり弟も同意しそうであること、そして実際に目にしたその静粛な佇まい、直感どおりにこの墓所にお墓を移すことになりました。

お墓を移すのも結構手間がかかります。先ず、移す先のお墓があることを証明しないと既存のお墓を廃してお骨を移すことは出来ません。それを証明した上で、お骨を出す日と納骨の日を決めてお経をあげていただくお坊さんを頼み、必要と思われる親族に知らせたりします。お墓を取り除いて更地にする業者も手配しておいて、その墓地の管理者にも連絡をしておきます。

ぼくの場合は、お墓移転の同意を取り付ける親族が数名だったので比較的楽でしたが、それでも同じことを娘の代になって彼女が行うことは容易いことではないはずです。面倒なことは、自分が元気なうちに済ませておくのが、ぼくの考え方です。

東京都内には相当数のお骨が自宅で保管されてるという話もあり、手元供養というやり方も増えているようです。ちなみに、自宅にお墓を作りそこにお骨を保管することは法律で禁じられていますが、家の中で骨壷を保管しておくのは禁じられていません。当面はよいのですが、関係する人が絶えてしまうといずれお骨をどうするか?という問題は残ります。

お墓とお骨をどうするかは、実は少なからぬ日本人の問題となっています。ぼくの体験談が、皆さんの参考になれば幸いです。